今回はポジティブ・サイコロジーという最新の心理学の分野から、最高の自分を引き出すための方法を紹介します。



原書の紹介

いかに自身のポテンシャルを最大限に引き出すかという観点で、仕事だけでなく幸せになる生き方という意味でも参考になる情報が詰まった本です。
タイトルのExceptionalは「格別の」とか「並外れた」という意味で、最高の自分を引き出すことで並外れた成果が出せるという意味が込められています。

著書は私が卒業したロンドン・ビジネス・スクール教授のダニエル・ケーブル。
彼はポジティブ・サイコロジーと言って、過去のトラウマなどネガティブな面に着目しがちだった心理学の歴史から脱却し、強みやワクワク感などポジティブな能力・感情に着目することで問題を解決するという領域を主に研究しています。



彼の前著『脳科学に基づく働き方革命 Alive at Work』は邦訳が出ているので、ポジティブサイコロジーをいかに組織に活かすかを学びたい人は参考にして下さい。

内容

「私のハイライト」とは

この本は「私のハイライト」を作り、そこから「自分だけの強み」を発見し、それを活かす方法を考えるという流れになっています。
「私のハイライト」はスポーツの試合に後によく放送されるハイライト(名シーンだけを集めた映像)から着想を得た概念で、過去の人生の中で自分の能力を最大限に活かせていた瞬間を集めて振り返ることを指します。
とある企業では入社時の研修で「私のハイライト」の振り返りをさせたところ、入社直後に辞める人が減ったという報告がされています。

では、順を追って見ていきましょう。

「私のハイライト」の効用

まず、「私のハイライト」を作ることの効用を説明します。

自分の強みに注目できる
ポジティブ・サイコロジーの基本は、強みに注目するということです。
多くの人は、成功や成長をするためには弱みを克服しなければいけないと考えていますが、脳科学では、弱みを指摘されることでストレスホルモンが生成され、身構えてしまってむしろ変化しづらくなることが分かっています。
「良いところと悪いところを両方指摘する」というのも良く言われるやり方ですが、そうすると脳は悪い方に注目が行くようにできていますから、やはり身構えてしまいます。
成長するには、安全でじっくり探索ができる環境が必要で、「私のハイライト」はそのような環境を作ることの一助となります。

生きている間に「追悼の言葉」が聞ける
追悼の言葉は、故人の素晴らしい点や、あげた成果などが恐らく最も多く語られる機会ですが、残念ながら本人の耳に届くことはありません。
「人生のハイライト」を作るには、周囲の人に過去の自分の「名シーン」を聞きます。そのため、亡くなって初めて言われるようなことを、生きている間に聞く機会になります。

ポジティブな自己認識を作る
最新の心理学では、自己認識は状況によって変わる複合的なものであると理解されています。家庭での自分と、職場での自分では特性が違うというのは、共感される方も多いのではないでしょうか。
人間の脳は、物事を関連付けて記憶するように出来ていますが、その関係性を思い出す頻度が多いほど脳の中では強い結びつきが作られていきます。自己認識とは、自分自身にどんな特性や役割を関連づけているか、と言えますが、「私のハイライト」を作ることでポジティブな要素と自身の関連付けを強化し、最高の自分を引き出すことができるようになります。

ポジティブなトラウマを生み出す
トラウマは心理学ではネガティブな経験として捉えられがちですが、重大な病気や事故などの経験がむしろ成長につながることがあるという研究があるそうです。著者も、自身が癌で余命宣告を受けた後に奇跡的に回復した経験から、その後の人生を「本来は生きられなかった特別な時間」と捉えられるようになったと話しています。
また「私のハイライト」により自身の強みや過去の成果について周りの人から話を聞くことは、ポジティブなトラウマと言えるくらい強烈な経験となり、自身が成長するきっかけとなることがあります。

「私のハイライト」を作る

では、実際に「私のハイライト」を作る方法を説明します。

自身のハイライトを振り返る
まずは、自分自身で今までのハイライトを振り返って書き出してみましょう。振り返る時のコツとしては、下記3つの点を意識して下さい。
・事実の羅列ではなく、起承転結のあるストーリーとして書く
・その時の様子を思い浮かべながら書く
・場所、一緒にいた人、自分の行動と結果、周囲の人への影響、自分が感じた感情を含める

「私のハイライト」を送り合う
自身の強みや成果は、本人が自覚していないこともよくあるものです。周りの人に、あなたのハイライトを書いてもらうようにお願いしましょう。その時は上記3つのコツも伝えて、できるだけ具体的に書いてもらうようにしましょう。
また、このような「生きている間の追悼」は伝える側の人生の質も向上することが分かっています。身近な人に手紙を書いて、その人のハイライトを教えてあげましょう。

「私のハイライト」から「自分だけの強み」を導く
受け取ったハイライトを読むときは、受け取るたびに少しづつ読むのではなく、落ち着いた場所と時間を確保して、皆からの返信を一気に読みましょう。そうすることで、先に紹介したポジティブなトラウマを経験できる可能性が高まります。
そして受け取ったハイライトから、共通のテーマやキーワードを探し、「自分だけの強み(Signature Strength)」を発見しましょう。
「自分だけの強み」は、人前で話す、分析能力、などの表面的なスキルではなく、どんな状況でどんな行動を取るのか、どんなことに情熱を感じるのかと言った行動特性で、「得意なこと」と「好きなこと」の交差点にあります。

「自分だけの強み」を活かす

「私のハイライト」から自分だけの強みを見つけたら、それを活かす機会を作っていきましょう。

自分だけの強みを活かす効果と方法
自分だけの強みは使えば使うほど磨かれますし、自身の満足度も高くなります。ただし強みであっても、今まで使っていなかった環境や状況で使うことには、それなりの勇気と工夫が要ります。
行動を変えるモチベーションを得るために、自分の将来なりたい姿を想像して、どんなアクションを起こせばその姿に近づけるか思い描きましょう。2ヶ月(66日間)程度同じ行動を取っていると、習慣化して自然とこなせるようになります。

日々の過ごし方を工夫する
家族や友人との時間の使い方、趣味やボランティアなど、日々の生活の中で自分だけの強みを活かせる機会を新たに作りましょう。
ただし、どんな強みも不適切な場面で使えば悪影響となりますので、あくまで目標に向けて強みがどのように活かせるか考えましょう。

仕事を工夫する
仕事でも、新たな業務を増やしたり、同じ業務でもやり方を工夫することで強みが活きる機会を増やすことができます。
面白いものでは、自分の肩書(〇〇部営業など)を自分の強みや目標と合ったものに変える(例:人と人をつなげる人)ことで、より仕事に意味を見いだせるようになるという研究もあります。

やってみよう(エクササイズ)

この本では、提案された内容を実践するための具体的なエクササイズが沢山紹介されていますが、その中で特に重要なものや、実践しやすそうなものを私の方でピックアップしてみました。

私はどんな人で、どんな人になりたいか?を考えるため、下記を書き出す
・「母親」「サラリーマン」など自身の担っている役割
・それぞれの役割での自分の特徴
・どんな人になりたいか
・どんな人にはなりたくない(がなってしまうかも知れないと心配している)か
・自分自身とどんな物事や特徴を関連づけているか

急死に一生を得た後を想像して、これからの人生どんなことしてみたいか?考えてみる
・何をするのが好きで、何をしているときに「生きている」と感じられるか
・変えるべき習慣や性格があったとして、いつまでそのままにするか
・あと6ヶ月で死ぬとしたら、どんなことを後悔するか
・優先順位をどのように変えるべきか、またなぜその優先順位に従って行動できていないのか

「自分だけの強み」を見つけるヒント
「自分だけの強み」は「優しい」などの形容詞ではなく、「困っている人を助ける」などの動詞(行動)で書くようにしましょう。また下記の質問に答えてみることも、「自分だけの強み」を見つけるヒントになります。
・子供の頃から現在までずっと好きなことはなにか?
・やっていてエネルギーに満ちているような感覚になることはなにか?
・「ToDoリスト」に入れなくてもやりたくなるようなことはなにか?
・最も自分らしくいられると感じるのはどんな時か?
・頑張らなくてもうまく出来てしまうことは何か?

また他の記事でも紹介済みですが、VIACharacterという診断ツールがこの本でも推奨されています。(英語のみ)
https://www.viacharacter.org/survey/account/register

未来の「最高の自分」を想像してみる
・誰と一緒にいるか?
・どんな感情、マインドセットを持っているか?
・どんな仕事をして、どんな成果を出しているか?
・どんな余暇でリフレッシュしているか?
・何を学んでいるか?
・どんな健康状態で、どれくらい活動的か?

強みを活す機会について日記をつける
・「自分だけの強み」を一つ選び、それを活かせそうな活動を10-15個書き出す
・書き出したなかで一番気に入ったものを選ぶ
・今日から66日目の日付を確認し、それまで毎日、選んだ活動ができたか日記で振り返る

関係性を振り返る
・過去2ヶ月に電話なども含めて話をした人を書き出す
・最高の自分でいられるのは誰といる時か?
・66日間、誰といる時に力が湧いてきて、誰といると力が削がれるかを観察する
・一日の終りに観察結果を日記にまとめる

私の解釈と実践

「自分だけの強み」や「感謝」など、以前紹介した幸せの心理学と共通している内容も多いですが、「私のハイライト」を作るために周り人にフィードバックをもらう、また周りの人にも「生きている間の追悼」という形で感謝を伝える、というユニークで具体的な方法が紹介されているのがこの本の面白い点だと思います。

私はMBA時代に著者の授業を履修したので、その一環で周りの人に「私のハイライト」に関するフィードバックをもらったり、その人達に感謝の手紙を書いたり、自分だけの強みを見つけてそれを生かす方法を考えたレポートを書いたりしました。

私は「授業の課題だから」という理由でお願いできたものの、そうでもないと、自分に対するポジティブ限定のフィードバックをお願いするのは勇気がいるものですが、実は依頼して見ると快く応えてくれる人が多いので、皆さんも勇気を出してやってみることをおすすめします。

ストレングス・ファインダー
「自分だけの強み」という観点で作られたものではありませんが、強みの診断という観点では、有名なGallop社のストレングス・ファインダーもおすすめです。
私はこのストレングス・ファインダーで「コミュニケーション(書き言葉も含む)」という強みをみつけてからブログを書くようになりました。

下記の本どちらかを購入して診断用のコードを入手するか、ウェブサイトから直接診断だけを受けることができます。

https://www.gallup.com/cliftonstrengths/ja










 以上、参考になると嬉しいです!