組織の変革に関して、今回は経営者や人事などのトップダウンの変革ではなく、一社員や中間管理職が草の根レベルでどんなことができるのかを示した本を紹介します。
チェンジマネジメントの本はトップダウンを前提として書かれたものが多いですが、私の経験では一社員や中間管理職が組織を変えたいと試行錯誤しているケースは非常に多いです。この本は、そのような方々にとって非常に貴重で参考になる本だと思います。
目次
1. 原書の紹介
2. 内容
2-1.適度な過激派とアイデンティティ
2-2.自分らしくあるという静かな抵抗
2-3.驚異をチャンスに変える
2-4.交渉のテクニックを活かす
2-5.小さな勝利を積み重ねる
2-6.組織的な行動
2-7.適度な過激派が抱える課題と組織的な条件
3. 私の解釈と補足
草の根の変革の意義
この本は、目立たないけれど草の根で着実に変化を起こしてきた人達の物語です。
著者が草の根の変革の話をすると、トップダウンの変革ほど効果がないのではないか、一から理想的な組織を立ち上げればいいのでは、もっとアクティブに活動すべきではないか、などの疑問を投げかけられることが多々あるそうです。
それに対し著者は、草の根が他の方法より勝っているという主張をするつもりはないものの、他の方法と同じくらい効果があると示したいと言っています。
適度な過激派とは
この本では、目立たないけれど着実な変化を起こしてきた人達を、「適度な過激派(Tempered Radical)」と呼んでいます。
適度な過激派は、高い目標を掲げながら、組織の多数派から逸脱しすぎないように漸進的なやり方で変革を進めます。急進的な思想をそのまま推し進めようとすると、組織から浮いて昇進の機会が与えられにくくなったり、最悪の場合組織にいられなくなってしまうことがあるからです。Rocking the boat(船をゆする)というこの本のタイトルは、「自分自身が舟から落ちない程度に舟を揺する」という意味がこめられています。
適度な過激派がとる戦略は、下記5つに分類されます。
詳細は次の章から細かく説明されますが、上にあるものほどインパクト小さく見えにくい活動で、下に行くほど組織の変革インパクトは大きいが、目立ちすぎると組織への反発と捉えられるリスクも高まります。
5つの戦略は相反するものではなく、多くの適度な過激派達はいくつかの戦略を混ぜて使っています。
アイデンティティを保つ
人のアイデンティティは複合的なもので、多くの人は会社の人・職業人としてのアイデンティティの他に、人種や性別、性的指向に関するものや、環境問題に関心があるなどの信条に基づくものなど複数のアイデンティティを持っています。しかし、職場で組織人・職業人としてのアイデンティティ以外のアイデンティティを表現する機会を持たないと、徐々にそのようなアイデンティティが失れてしまうことがあります。
適度な過激派は、組織の文化から外れた行動を取ることで、自分のアイデンティティを確認し、似たような考えを持つ人を引き寄せることができます。また小さな行動を起こすことで更に別の小さな行動を起こす勇気が生まれ、少しづつ組織全体が変わっていきます。
では、5つの戦略を順番に見ていきましょう。
特にマイノリティに対するステレオタイプは、本人が内面化してしまう(例:黒人の学生が「黒人は成績が悪い」という考えを内面化して本当に成績が下がってしまう)ことがあるため、目立ちすぎない形で自己表現をすることで、ポジティブな自己像を保つことができます。
目立ちすぎない自己表現には、下記のようなものがあります。
しかし、その様な場で、真っ向からの対立を避けつつも相手の気づきを促すような巧妙な返しをするという選択肢もあります。
そのような返しができるようになるためには、まずそのような状況を驚異ではなくチャンスであると捉えること、何も言わないことが正解なときもあると理解すること、そして状況を個人的な問題として捉えないこと等が必要になります。
真っ向からの対立を避けつつ沈黙をせず状況をチャンスに変えるために、著者は下記6つの戦略を挙げています。例として、夕方は家族と時間を過ごしたい社員が、就業時間後に会議が入りそうになっている時の対応を基に紹介します。
またこの様な対応は、それを言われた当事者ではなく、第三者が言うことでより効果的になることがあります。
具体的には下記のような技術が紹介されています。
私の周りにも、一般社員や中間管理職で組織を変えようと試行錯誤している人が沢山います(転職頻度の少ない日本では特にそのような人が多いように思います)が、これまでのチェンジマネジメント理論はトップダウンが前提となっているため、彼・彼女らにしてあげられるアドバイスが非常に限られていました。
この本が扱うような草の根の変革について、今後より研究が盛んになることを期待します。
この本には、私自身の過去の経験を思い起こさせるような内容も沢山ありました。
チェンジマネジメントの本はトップダウンを前提として書かれたものが多いですが、私の経験では一社員や中間管理職が組織を変えたいと試行錯誤しているケースは非常に多いです。この本は、そのような方々にとって非常に貴重で参考になる本だと思います。
目次
1. 原書の紹介
2. 内容
2-1.適度な過激派とアイデンティティ
2-2.自分らしくあるという静かな抵抗
2-3.驚異をチャンスに変える
2-4.交渉のテクニックを活かす
2-5.小さな勝利を積み重ねる
2-6.組織的な行動
2-7.適度な過激派が抱える課題と組織的な条件
3. 私の解釈と補足
原書の紹介
チェンジマネジメント研究に新しい風を吹かせる、スタンフォード大学の若手心理学者による著書。
著者は以前は社会変革領域を研究していたようで、女性や有色人種、性的マイノリティーなどダイバーシティ感連の内容が中心だが、遅い時間に会議をしないなどの働き方に関する取組や、環境問題に関する取り組みなど幅広い内容が取り上げられており、概念やテクニックは変革の内容に関わらず参考になる。
初版ではTempered Radical(意味は後述)というタイトルだったが、Radicalという言葉がイスラム過激派などを意味することが多くなったことから、タイトルを変更したらしい。
著者は以前は社会変革領域を研究していたようで、女性や有色人種、性的マイノリティーなどダイバーシティ感連の内容が中心だが、遅い時間に会議をしないなどの働き方に関する取組や、環境問題に関する取り組みなど幅広い内容が取り上げられており、概念やテクニックは変革の内容に関わらず参考になる。
初版ではTempered Radical(意味は後述)というタイトルだったが、Radicalという言葉がイスラム過激派などを意味することが多くなったことから、タイトルを変更したらしい。
Meyerson, Debra E.
2008-03-01
内容
適度な過激派とアイデンティティ
まずは草の根の変革の意義や、この本の主題となる適度な過激派について説明をします。草の根の変革の意義
この本は、目立たないけれど草の根で着実に変化を起こしてきた人達の物語です。
著者が草の根の変革の話をすると、トップダウンの変革ほど効果がないのではないか、一から理想的な組織を立ち上げればいいのでは、もっとアクティブに活動すべきではないか、などの疑問を投げかけられることが多々あるそうです。
それに対し著者は、草の根が他の方法より勝っているという主張をするつもりはないものの、他の方法と同じくらい効果があると示したいと言っています。
これまで起きた社会的な変革を見ると、小さな市民団体や企業からはじまり、大企業や政府組織に拡大しています。草の根・トップダウンなどの異なる手法は、それぞれの段階で相乗効果をもたらしながらも異なる役割を果たすものなので、手法の違いで争うのは生産的でないと主張しています。
適度な過激派とは
この本では、目立たないけれど着実な変化を起こしてきた人達を、「適度な過激派(Tempered Radical)」と呼んでいます。
適度な過激派は、高い目標を掲げながら、組織の多数派から逸脱しすぎないように漸進的なやり方で変革を進めます。急進的な思想をそのまま推し進めようとすると、組織から浮いて昇進の機会が与えられにくくなったり、最悪の場合組織にいられなくなってしまうことがあるからです。Rocking the boat(船をゆする)というこの本のタイトルは、「自分自身が舟から落ちない程度に舟を揺する」という意味がこめられています。
適度な過激派がとる戦略は、下記5つに分類されます。
詳細は次の章から細かく説明されますが、上にあるものほどインパクト小さく見えにくい活動で、下に行くほど組織の変革インパクトは大きいが、目立ちすぎると組織への反発と捉えられるリスクも高まります。
5つの戦略は相反するものではなく、多くの適度な過激派達はいくつかの戦略を混ぜて使っています。
- 自分らしくあるという静かな抵抗
- 驚異をチャンスに変える
- 交渉のテクニックを活かす
- 小さな勝利を積み重ねる
- 組織的な行動
アイデンティティを保つ
人のアイデンティティは複合的なもので、多くの人は会社の人・職業人としてのアイデンティティの他に、人種や性別、性的指向に関するものや、環境問題に関心があるなどの信条に基づくものなど複数のアイデンティティを持っています。しかし、職場で組織人・職業人としてのアイデンティティ以外のアイデンティティを表現する機会を持たないと、徐々にそのようなアイデンティティが失れてしまうことがあります。
適度な過激派は、組織の文化から外れた行動を取ることで、自分のアイデンティティを確認し、似たような考えを持つ人を引き寄せることができます。また小さな行動を起こすことで更に別の小さな行動を起こす勇気が生まれ、少しづつ組織全体が変わっていきます。
では、5つの戦略を順番に見ていきましょう。
自分らしくあるという静かな抵抗
組織で多数派の文化や規範とは異なる自分の考えを行動で表すことが、周りの人に新らしいやり方を受け入れさせるきっかけになることがあります。特にマイノリティに対するステレオタイプは、本人が内面化してしまう(例:黒人の学生が「黒人は成績が悪い」という考えを内面化して本当に成績が下がってしまう)ことがあるため、目立ちすぎない形で自己表現をすることで、ポジティブな自己像を保つことができます。
目立ちすぎない自己表現には、下記のようなものがあります。
- 服装(例:男性ばかりの職場で、あえて女性らしい服装をする)
- デスク(例:同性パートナーとの写真を飾る、女性のキャリアに関する本を置いておく)
- リーダーシップのスタイル(例:トップダウンの組織で、部下の意見をよく聞く)
- 儀式(例:LGBTQ+を支持するパレードへの参加)
- 働き方(例:午後5時以降のミーティングを断る)
- 言語(例:訛り(英語のアクセント)を直さない、通じる相手とは母語を使う)
驚異をチャンスに変える
自分の信条やアイデンティティを否定するような発言(例:性的マイノリティへの差別的発言)を目の前でされた時、それが意図的であれ無意識に出た発言であれ、多くの人は立場が悪くなることを恐れて何も言いません。しかし、その様な場で、真っ向からの対立を避けつつも相手の気づきを促すような巧妙な返しをするという選択肢もあります。
そのような返しができるようになるためには、まずそのような状況を驚異ではなくチャンスであると捉えること、何も言わないことが正解なときもあると理解すること、そして状況を個人的な問題として捉えないこと等が必要になります。
真っ向からの対立を避けつつ沈黙をせず状況をチャンスに変えるために、著者は下記6つの戦略を挙げています。例として、夕方は家族と時間を過ごしたい社員が、就業時間後に会議が入りそうになっている時の対応を基に紹介します。
- 流れを断つ(例:同僚が遅い時間を提案したら、対案として日中の時間帯を提案する)
- 明確に伝える(例:就業後の会議は家族の時間の侵害であると表明する。その時は変わらなくても人々の心に残り今後の行動が変わることがある。直接的に批判するのででなく「なぜそう考えるのですか?」「なぜこうなったのか詳しく教えて下さい」など質問の形を取ると効果的)
- 前提や行動を正す(例:夕方は家族との約束があり、急な会議は入れられないと伝える)
- 方向を変える(例:個別の事象ではなく、頻繁に遅い時間に会議が入っているというパターンを指摘する)
- ユーモアを使う(例:「今日は子供が沢山昼食を食べていたかた良かった」など、暗に次回から遅い時間に会議を入れないで欲しいことを伝える)
- 後で反応する(例:上記の反応をその場でせず、よく考えタイミングを選んで後日伝える)
またこの様な対応は、それを言われた当事者ではなく、第三者が言うことでより効果的になることがあります。
交渉のテクニックを活かす
交渉を上手く進めるための技術に関しては様々な研究がされていますが、適度な過激派が直面する問題を交渉と捉えることで、そのような技術を活かすことができます。具体的には下記のような技術が紹介されています。
- 感情的にならず、一歩引いて広い視野で見る 状況をスートーリーとして考えて、違う結末を考えることで問題を外部化する、問題と人が相互にどのように影響し合っているかマッピングしそこにどんな影響を加えられるか考察する
- 自分自身の内面を振り返る 本当に成し遂げたいことは何か?妥協できることと出来ないことは何か?起こりうる最悪の事態は何か?交渉が決裂した際に自分に残される代替案(交渉ではBATNA:Best Alternative to Negotiated Agreementと呼ばれる)は何か?を整理する
- 他の関係者の興味を理解する 自身について理解した様に、関係者それぞれがもつ動機を整理する
- 第三者を巻き込む 第三者を交渉に巻き込むことで、一歩下がって冷静になる手助けをする、関係者を紹介・仲介する、交渉の正当性・信頼性を高める、感情的なサポートができるなど様々な効用がある
小さな勝利を積み重ねる
小さな勝利とは、限定的だが目に見える成果を産む、実現可能な活動です。小さな勝利を積み重ねることで、複雑な問題に対して圧倒されずに一歩踏み出せる、自己効力感が上がり良い機運が作れる、組織について学びを得る、アイデンティティを保つなどの効果があります。
小さな勝利を積み重ねるためには、下記の5つのステップを踏む必要があります。
組織的な活動が起きるためには、目に見える機会または脅威、集団行動を起こす組織などの基盤、集団的アイデンティティや集団行動が変化を起こせるという希望があることが条件となります。
行動の仕方は、最初から組織で行動する方法、まずは個人で行動を起こして仲間を集める方法の他、同じバックグラウンドの人で集まり孤立を防ぐというシンプルな方法も含まれます。
この様な組織的な行動をとる上で、よく見られる問題に下記二つがあります。
適度な過激派が抱える課題
適度な過激派は、いくつか共通の課題を抱える傾向があるようです。
最後に、適度な過激派が成果を出すために、組織全体や直属の上司にどのような条件が必要なのかを見ていきます。
小さな勝利を積み重ねるためには、下記の5つのステップを踏む必要があります。
- 敢えて明確でないビジョンを作る(明確すぎると柔軟でなくなるため)
- 日常の中の小さな機会を見つける
- 組織で受け入れられる範囲を試す
- 周囲の人がどう反応しそうかを基に、戦うタイミングや内容を賢く選ぶ
- 行動した結果(変わったこと変わらなかったこと)をよく観察し、学びにつなげる
- ストーリー 社会や組織で広く信じられている言説を塗り替え、新しいストーリーを構築する
- 成果の表し方(言語) 採用コスト削減など、組織の既存の枠組で良いとされる説明と、多様性推進など新しい価値観を表す説明を両方使う(筆者は、これを相手のパワーを自分のために使うという意味で「言葉の柔術」と呼んでいます)
- コミュニケーション 公式・非公式、口頭・書面・ノベルティグッズなど色々なコミュニケーションツールを使う
組織的な行動
これまで個人単位でのアクションを紹介してきましたが、仲間を集めて組織立って行動することで、より多くの正当性やリソースを得られます。組織的な活動が起きるためには、目に見える機会または脅威、集団行動を起こす組織などの基盤、集団的アイデンティティや集団行動が変化を起こせるという希望があることが条件となります。
行動の仕方は、最初から組織で行動する方法、まずは個人で行動を起こして仲間を集める方法の他、同じバックグラウンドの人で集まり孤立を防ぐというシンプルな方法も含まれます。
この様な組織的な行動をとる上で、よく見られる問題に下記二つがあります。
- 共通の興味や課題を見つける 全員に共通する目標だけに注力して、一部が抱える問題(例:女性の中でも黒人の女性だけが抱える問題)を無視すると、その人たちが不満を抱えて離れていってしまうことがある。共通の目標を示しながらもサブの目標を立てることを促し、中心メンバーが特定の属性にだけ寄らないようにするなどの配慮をする。
- 会社公認の組織にするか 会社公認:予算、業務時間、正当性、会社役員や関係部署との関係性が得られる、簡単には無くならないなどのメリットはあるが、政治的な活動はしないなど制限がかかったり、サブグループのサポートがしにくくなるなども問題点がある。
会社非公認:柔軟に活動しやすいが、リソースが限られるため小規模に留まることが多い
適度な過激派が抱える課題と組織的な条件
最後に、適度な過激派が抱える課題や、彼・彼女らが活躍するための組織的な条件を見ていきます。適度な過激派が抱える課題
適度な過激派は、いくつか共通の課題を抱える傾向があるようです。
- 両面性(アンビバレンス) 組織を変えようとしながらもその組織に属しているという両面的な性質から、不安、罪悪感や孤独を感じたり、周囲から偽善者と非難されることがある。この様な感情を完全になくすことはできないが、適度な過激派は常にこの様な感情に悩まされるということを知るだけでも救いになる。
- 妥協しすぎる 機会を伺いすぎて逃す、組織の言葉遣いに染まりすぎて批判的に考えられなくなる、職場で求められる性格を装って(仮面をつけて)いたら本当に自分のものになってしまう、多数派に溶け込むために同じ属性の人と距離を取ってアイデンティティを失ってしまうなど、妥協を繰り返すことで徐々に大切なアイデンティティや信念を失ってしまうことがある。
- 自身の評判が損なわれる 妥協の反対のリスク。「この人といえば女性問題」など特定の問題と結びつけられる(ワン・イシュー・パーソン)ことで、他の分野での貢献が認識されなくなることもある。
- 失望、疲労や燃え尽き 適度な過激派の活動は進捗が遅いため、ストレスになりやすい。環境を変える(仕事を辞める)方がよいこともあることを頭に入れておくべき。
最後に、適度な過激派が成果を出すために、組織全体や直属の上司にどのような条件が必要なのかを見ていきます。
- 文化 適度な過激派が取り組もうとしている問題に関して、組織全体と個人の信条の差がどれくらいあるか、既存の文化がどれくらい強く共有されているか、逸脱したらどれくらいのリスクがあるか、等によって適度な過激派の成功度合いが左右される。また組織全体の文化との違いが大きくても、一部でも共感する人達(サブ・グループ)がいれば成功確率は上がる。
- 組織の構成 同じ属性や考え方の人が組織、とくに役員や管理職にどれくらいいるか。役員に15%以上女性がいると末端の女性社員が女性問題について発言する頻度が上がるという研究もある。人数以外にも、役員の公的なコメントや支持などで活動の正当性が得られる環境では、成功確率が上がる。
- 直属の上司 この3つの中で最も影響が大きい要素。
適度な過激派の上司はまた適度な過激派である必要がある。彼・彼女らの行動を直接的にサポートすることに加え、メンバーの意見を求める、自身が間違えた時はそれを認め謙虚な姿勢を示す、失敗を受け入れるなど、心理的に安全な環境を作ることが不可欠。
私の解釈と補足
トップダウンを前提として行われてきたこれまでのチェンジマネジメントの研究に対して、この本は非常に革新的な本だと思います。私の周りにも、一般社員や中間管理職で組織を変えようと試行錯誤している人が沢山います(転職頻度の少ない日本では特にそのような人が多いように思います)が、これまでのチェンジマネジメント理論はトップダウンが前提となっているため、彼・彼女らにしてあげられるアドバイスが非常に限られていました。
この本が扱うような草の根の変革について、今後より研究が盛んになることを期待します。
この本には、私自身の過去の経験を思い起こさせるような内容も沢山ありました。
以前日系企業で働いていた時、ジェンダーの問題などで自分が心情と違う発言をする人が多くいました。ジェンダー平等主義の私ににとって、そのような状況は非常にフラストレーションの貯まるものでしたが、当時の私は組織に適応するために沈黙を続け、他の女性社員と距離を取るということまでしていました。そのおかげもあってか組織では評価され周囲より早く昇進しましたが、最終的には会社の体制に我慢ができなくなり、今度は会社を真っ向から批判し、結果的に会社との間にトラブルが起きてしまいました。辞める予定だったからとった行動ではありますが、今思うと他にやり方があったように思います。
真っ向から対立せず、斬新的な形で変革を進めるのは、非常に忍耐が必要ですが、一方で最も現実的な方法のように感じます。私の知人で、働き方改革に関して組織トップに対して提案をした方がいますが、残念ながら上手く受け要られなかったようです。場合によっては成功することもあるかもしれませんが、常に真っ向から挑めば良い訳ではないことは、この本が教えてくれる大事な教訓です。
最後に、直接的な参考文献ではありませんが、関連があると思う文献をいくつか紹介しておきます。
まず最初に、この本でも度々登場するダイバーシティに関する文献から。
ワークデザインは、恐らく欧米で近年出版されたダイバーシティ関連の書籍の中で一番有名で、一番影響力のある本です。ジェンダーの問題が、分かりやすいセクハラや差別発言だけでなく、無意識のバイアスという複雑な領域も含まれること、またそれらをどの様に克服することができるかが非常に明快に書かれています。
次に、最後の組織的条件の部分で紹介した、心理的安全性について。
心理的安全性は、近年の組織論・リーダーシップ論の中で最もホットと言えるトピックです。関連書籍は沢山ありますが、下記の本は心理的安全性の研究をリードしてきた研究者による、最も包括的で信頼性のある本だと思います。
以上、参考になれば嬉しいです。この分野で新しい書籍があればまた紹介したいと思います。
真っ向から対立せず、斬新的な形で変革を進めるのは、非常に忍耐が必要ですが、一方で最も現実的な方法のように感じます。私の知人で、働き方改革に関して組織トップに対して提案をした方がいますが、残念ながら上手く受け要られなかったようです。場合によっては成功することもあるかもしれませんが、常に真っ向から挑めば良い訳ではないことは、この本が教えてくれる大事な教訓です。
最後に、直接的な参考文献ではありませんが、関連があると思う文献をいくつか紹介しておきます。
まず最初に、この本でも度々登場するダイバーシティに関する文献から。
ワークデザインは、恐らく欧米で近年出版されたダイバーシティ関連の書籍の中で一番有名で、一番影響力のある本です。ジェンダーの問題が、分かりやすいセクハラや差別発言だけでなく、無意識のバイアスという複雑な領域も含まれること、またそれらをどの様に克服することができるかが非常に明快に書かれています。
次に、最後の組織的条件の部分で紹介した、心理的安全性について。
心理的安全性は、近年の組織論・リーダーシップ論の中で最もホットと言えるトピックです。関連書籍は沢山ありますが、下記の本は心理的安全性の研究をリードしてきた研究者による、最も包括的で信頼性のある本だと思います。
以上、参考になれば嬉しいです。この分野で新しい書籍があればまた紹介したいと思います。
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