シンガポールで暮らしたり、シンガポールの人と暮らしたりする機会がある人が皆悩まされたり、衝撃を受けたりするシングリッシュ。
今回はシングリッシュ初心者の方のために、その主な特徴を紹介したいと思います。

シングリッシュとは何か

まず、シングリッシュとは何を指すのか、どういう場合に使われるのかに関して、私の見解をまとめたいと思います。
あくまでも私の見解で、厳密な定義等ではありませんのでご了承下さい。

日本人の指すシングリッシュとシンガポール人の指すシングリッシュ

まず、「シングリッシュ」という言葉が指す範疇について、日本人とシンガポールでは認識が異なるようなので、そちらを説明します。
下記が私の理解です。

日本人の指す「シングリッシュ」
シンガポールで話される英語形態全体のこと
発音・文法・単語など全てを含む

シンガポール人が指す「シングリッシュ」
シンガポールで使われる、主に中国語の方言やマレー語を源流とする英米の英語にはない語彙のこと(詳細後述)
発音や文法に関しては、本人がシンガポール独自だと自覚しているかどうかによるが、含まれないことが多い

シンガポールに来たばかりの日本人にとってシンガポール英語で一番印象的なのは発音だと思います。
詳細は後ほど解説しますが、他の英語圏の国の人とは問題なく英語が話せる人でも、シンガポール人の英語は理解に苦しむという人も多いです。

一方、シンガポール人にとってのシングリッシュとは、後述する独特な単語や言い回しのことをいい、発音のことは指さないことが多いです。というか、本人達は訛りがあると思っていません。
日本人の地方出身者で思いっきり訛っているのに標準語を話せていると思っている人がよくいますが、それと同じですね。。
訛りの強いシンガポール人相手にYou speak Singlishとか、Your Singlish is difficult for me to understandなどという日本人を時々見かけますが、上述の通り本人達にとって訛りはSinglishには含まれませんので、相手の気分を害する可能性があるため気をつけましょう。

この記事では、シンガポール英語(日本人の言うシングリッシュ)を下記3つに分解して解説していきます
  • 発音(イントネーション含む)
  • 文法
  • 語彙

シンガポール人はどこまでシングリッシュを自覚しているか

シングリッシュに文法や発音が含まれるかどうかは本人の自覚度合いによると書きましたが、シンガポール人の中でも海外経験や教育レベルの度合いによって、どこまでがシンガポール独特な英語だと理解しているかは異なります。

シンガポール人の若い世代は英語で教育を受けているため、基本的に学校でイギリスの文法や語彙をしっかり勉強しています。
従って本来は正しい文法や語彙を理解しているはずなのですが、中国語で教育を受けていた世代の方や、若者でもあまりちゃんと勉強していなかった人(冗談のようで結構いっぱいいます)はそれが分かりません。

語尾にLaをつけるといったような独特の言い回しはがシンガポール独自であるということは、世代や教育レベルに関わらず全員が自覚しています。
一方、発音や文法に関しては、人によって自覚している人としていない人がいるという感じですね。

自覚度と状況による使い分け

シンガポール人は話し相手や状況によって話し方を使い分けします。
日本でも敬語の使い分けをしたり、英米の英語でもスラングを使うかどうか変えるなど、どの言語でも使い分けはあるものだと思いますが、シンガポール人は特に使い分け前後の差がとても大きく、人によってはほぼ別の言語レベルです。
そして、私の経験では話し手がどこまでを「シンガポール独自」だと理解しているかによって、使い分け具合が変わります。

上述の通り、独特の語彙に関しては全員がシンガポール独自だと理解しているため、基本的にビジネスや観光などフォーマルな場面では使いません。
例外として、語尾にLaをつけるなどは癖が抜けないのと、意味が分からなくても文の主意は変わらないため外国人相手で使う人もいます。
その他の独特の語彙に関しては、親しくなったり、シンガポールに長く住んでいて「この人はシングリッシュが理解できる人だ」と認定されると、外国人相手でも使われるという感じですね。
(私も夫や一部の友人とは結構なこてこてシングリッシュで話しています)

発音や文法を状況によって使い分けるかどうかは、その人が英米に近い発音をすることができるかや、正しい文法を理解してるかによります。
個人的な体験談として、シンガポール航空に乗った際にキャビンアテンダントさんが、同僚同士では「Ei, can pass me the water ah?」のような超シングリッシュで話していたにも関わらず、私に話しかける際には綺麗な発音で「Would like tea or cofee?」と話しかけてきて、その切り替え様に苦笑したことがあります。
恐らくキャビンアテンダントさんは会社から発音や英語に関してトレーニングを受けているため、この様なことができるのだと思います。

一方私の夫は、そこまでの発音の区別はできません。私の家族(英語は分かるけどシングリッシュは分からない)などに話す時は少し話し方を変えているようですが、シンガポール訛りが抜けきってないです。。




これであなたもシンガポール英語が分かる

では、ここから具体的なシンガポール英語(日本人の言うシングリッシュ)の解説をしていきます。

発音

上述の通り、シンガポール英語の発音は独特で、最初は苦労する人が多いです。
特徴を理解しておくと聞き取りやすくなると思いますので、ここではシンガポール英語の特徴的な発音を紹介します。

イントネーション:全ての音節を等しく強調
英語は一つの単語の中の特定の音節にアクセントをおく、と皆さん学校で習ったと思います。
例えばSingaporeという単語は、SingaporeというようにSinという部分に強いアクセントが来るのが英米の英語の発音です。
また、これは学校ではあまり説明はされませんが、英米では一つの文の中でも重要な単語を強調して、他はサラッと話すことが一般的です。
例えばI live in Singaporeという文章だと、I live inの部分はサラっと発音して、シンガポールだけはっきり発音するなどで、英語初学者の方が聞き取りに苦労するポイントだったりしますね。

一方のシンガポール英語は、I live in Sin ga poreという音節一つ一つをほぼ同等の強さで話します。
恐らく中国語の影響だと思いますが、日本語にも強弱アクセントはありませんし、英米の発音に比べるとむしろ日本人には聞き取りやすいため、この点に苦労する方はあまりいないように見受けられます。

発音①TH発音の変化
発音に移りますが、THの発音は、シンガポール英語の最も特徴的な部分と言えると思います。
THは上下の歯の間に歯を挟んで発音すると学校で習った人は多いかと思いますが、シンガポールではこの様な発音はしません。
(ちなみにイギリスでも人や地域によってTHがFやVになるのはよく見られます)

単語の最初にTHが来る場合はTまたはDに変化
まず、Three、Through、Theatreなど、 発音記号[θ]で表される澄んだTHが単語の最初に来る場合は、THがTに変化します。
Three→Tree(チュリー)、Through→Trough(トゥルー)、Theatre→Teatre(ティアター)など。
お気づきの通り、数字の3のThreeと木を意味するTreeはシンガポールでは同じ発音になるため、最初は驚く方が多いです。
またThereなど発音記号[ð]で表される濁ったTHの場合は、DERE(デア)のようにDに変化します。

単語の最後にTHが来る場合はF/Pに変化
次にBath、Earth、Healthなど、単語の最後に発音する場合は、Baf(バッフ)、Earf(アッフ)、Healf(ヘルフ)の様にFまたは場合によってはPに聞こえるような発音に変化します。
これは頭にTHが来る場合より聞き取りづらいです。最後にFやPの発音が聞こえて何の意味か分からない時は、THに置き換えて考えて見ましょう。

発音②伸ばす母音が跳ねる
発音記号で[:]の伸ばす音(カタカナの「ー」)が、シンガポールでは「ッ」の様に跳ねる音に変わります。
例えば駐車場のCar Park(アメリカではParking lotといいますがシンガポールはイギリス流なのでCar Parkです)は、イギリスではカクと伸ばしますが、シンガポールではカッパックという感じに発音されます。
しかも最後のKは小さかったり発音されなかったりするので、河童って言っているのかと思ったととある日本人が言っていました(笑
上述のBathやEarthがバーフ、アーフにならずにバッフ、アッフと発音されるのも同じ理由です。

文法

シンガポール人は学校の英語のテストで書いったら思いっきり誤答になる文法をバリバリ使います。
「習ったのと違う!」と最初は困惑するかも知れませんが、理解できないことはないと思いますし、こちらが正しい文法を使って意味は通じるので、あまり気にせず付き合うのが正解です。

私は中国語も少し話せますが、シンガポール英語は基本的に中国語の文法で単語を英語に置き換えたような話し方をしるため、中国語が分かるとなぜシンガポール人が独特の文法を話すのかよく理解できます。

全てを紹介仕切ることはできませんが、主なものを紹介します。

・Can/Needを単独で使う
英米英語ではCanだけ単独で使うのは有りえませんが、シンガポールでは非常によく使われます。
Can?→できる?大丈夫?
Can can!→できるできる!
Cannot→無理だよ!駄目だよ!
※シンガポールではアメリカのキャントやイギリスのカーントという発音はどちらも使わず、常にキャノットと発音されます。
などなど。同様にNeed?(いる?)No need(いらない)などもよく単独で使われます。

・Whatなど疑問詞の順番がそのまま
疑問詞を使うときは文の最初に持ってくると学校で習ったと思いますが、シンガポール英語では元あった場所にそのまま置いておきます。
Where are you going today?→Today you going where?など

・Be動詞の省略
上記の文例からも分かるように、Be動詞が省略されることがあります。

・タイミングを表す単語が最初に来る
必ずではありませんが、英米の英語に比べるとTomorrow、Next weekなどタイミングを表す単語が文の最初に来ることが多いです。

・動詞は常に原型
Did you work yesterday?→Yesterday you work ma?など
中国語には動詞の活用がありませんので、三単現や過去形の活用が無視されることが多いです。
時制に関してもYesterdayなどの単語で表されているので、動詞変えなくても分かるでしょという感じです。

・疑問文を文末の一言で表す
上述の例文でも出ていますが、語尾についているma?meh?などは、日本語の文末の「か」のように最後につけるだけで文全体が疑問文であることを表せるので、Do you..? Are you..?など疑問形を使わずに、肯定形のまま最後に一言つける、という言い回しをします。
文末の表現に関しては本当に多様ですが、次の項で代表的なものを説明します。

・主語と述語の関係がめちゃくちゃ
You cannot eat here→Here cannot eat
私がシンガポールに来たばかりの時に一番びっくりしたのがこれです。
英語は主語と述語の関係性がきっちりした言語なので、Eatの主体は人や動物等でしかあり得ないのですが、シンガポール英語では場所が主語になっちゃいます。(そもそもHereは副詞なので、そういう意味でも主語にはならないのですが)
日本語でも「ここは飲食しちゃだめ」のような言い方をするので、慣れれば日本人には受け入れやすいかと思います。

・中国語の語法を流用
文法ではなく語法ですが、大雨のHeavy rainがBig rain、薬を飲むのTake medicineがEat medicineになるなど、英米の英語では一般的でない単語の組み合わせ方をします。
これも中国語で全く同じ表現があるので、それをそのまま翻訳して使っているものと思われます。
また親戚以外の中年男性・女性のことを「Uncle・Untie」と言いますが、これも英米では親戚にしか使わない言葉になります。日本では「おじさん・おばさん」が全く同じ意味で使われるので、非常に理解しやすいですね。

以上、シンガポール英語の特徴的な文法を紹介しました。

語彙

最後に一番肝心とも言える語彙を紹介します。

シンガポール英語独特の語彙は、ほとんどが中国語の方言である福建語、広東語、またはマレー語から来ています。(シンガポール人の中華系の人は福建や広東をルーツに持つ人が多く、言語だけでなく食べ物や宗教など色々な所に影響しています)

語彙は本当に沢山あるのでここでは紹介しきれませんし、私も全てを知っている訳ではありませんが、ここでは使われる頻度の高いものや、知っていると仲良くなれるかも知れないものをいくつか紹介します。
気になる方はSinglishで検索すると沢山出てくると思いますので、ご自身で調べてみて下さい。

語尾
疑問文系:Ma(マ)・Meh(メ)
上述の通り肯定文の最後につけると疑問文になります。
上述のCan単独使いとのあわせ技で、「Can ma?」=「できる?」など、とっても便利。
Mehは信じられないというようなニュアンスがあり、「Really meh?」は「本当に?信じられない!」と言った感じ。

肯定文系:La(ラ)・Leh(レ)・Lor(ロ)
「OK la」 はシンガポールに馴染みのない人でも知っていることが多い代表的シングリッシュかと思います。
Laは語気を強める言い方で、自分の意見に自信があったり、相手の意見を否定したりしたい時に使うので、無闇に使いすぎないように注意。
Lehはもう少し中立的だったり、自分の意見に自信が無いニュアンス。
例えば「Today going to rain la」だと相手が外出しようとしてるのを止めたいくて「今日は雨だから駄目だって!」という感じで、「Today going to rain leh」だと「今日雨降るっぽいから辞めとかない?」くらいの感じ。
またLaは完了や過去のニュアンスを表すこともあり、「You eat finish la ma?」=「食べ終わった?」のようにも使われます。
Lorはちょっと妥協したようなニュアンスがあり、「Then eat Chicken rice lor」だと他にも色々オプションを議論したけど折り合いがつかなくて、じゃあ「チキンライスにしとこう」くらいのニュアンス。

フレーズ
Alamak (アラマッ)
Oh my god! 思いがけないことが起こったとき、何かがうまくいかなかった時に使う感嘆詞。日本語の「あらまぁ」に意味も発音も近く、私は日本で連発していたら「おばさんか」と言われました。。

Wa Lau Eh(ワーラオエー)
Alemakと同様感嘆詞に近いが、Alemakが自分がやったことなどに対して使われるのに対して、Wah Lao Ehは他人に対して突っ込みたいときに使うというのが私の理解。なんだそれ!そんなのありかよ!という感じ。
Lauが福建語で父親という意味で、WahとEhは感嘆の意味らしい。Wah LauやLau Ehだけで使うこともある。
仲のいい友達動詞の会話を聞いていると数分に一回くらい聞こえてくる。

Zhun bo(ジュンボ)
Are you sure? 相手の冗談に突っ込みたい時、相手の言っていることが信じられない時に使う。
これも仲のいい人同士でよく使う。

Bo Jio(ボージョー)
You never asked me! 自分が知らない所でイベント等が開催されていて、何で誘ってくれなかったんだと言いたい時に使う。
実際は、誘われるはずもないイベントや、大して行きたいと思ってない場合に冗談として使うことも多いので、本気でとらないこと。
Bo jioと言われたときのお決まりの返し方は「Mei Lai la(メイライラ)」で、「どうせ来なかったくせに」という意味。

Ang Mo(アンモ)
いわゆる白人のこと。漢字では紅毛と書くらしい(標準中国語ではホンマオと読むはずなので、福建語か広東語だと思います)。
日本でも戦国時代後半から江戸時代にかけてスペインやポルトガル人を南蛮人、オランダやイギリス人を紅毛人と呼んでいたようなので、恐らく同じ由来だと思います。
私の感覚では「自分たちとは違う人」という差別的なニュアンスがあるように思い、積極的に使いたい単語ではありませんが、使う人がとても多いので知っておくと役に立つかも知れません。




以上、シングリッシュについて私が知っていることを書きました。
余談ですが、私は以前タクシー内で夫に電話をかけていた際、ドライバーに「君の完璧なシングリッシュだね!シンガポール人かと思ったよ」と言われたことがあるくらいネイティブ並のシングリッシュ・スピーカーです。笑


シンガポールに長期で滞在する人は、シンガポール英語を積極的に覚るとシンガポール人と仲良くなりやすいと思いますので、ぜひ「変な英語」と見下さずに学んでみて下さい。