日本で話題の女性活躍推進。私自身、働く女性として大事な問題です。

世界経済フォーラム報告したジェンダーギャップ指数(2017)では、シンガポールは65位、日本は114位。女性が働く環境としては日本より格段に良いというのは私の感覚としてもあります。
この記事では、シンガポールの家事・育児事情から、日本が学べることについて考えてみました。


注:
この記事を書いている時点で私は子供がいないため、あくまで実体験を伴わない観察結果であることをご了承下さい。
また残念ながらシンガポールは同性カップルに対してはかなり保守的な国で(男性同士の性交渉を禁じる法律が未だにあるくらい)、同性同士の結婚は認められていません。ここでは異性カップルに関してのみ記述することをご了承下さい。

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シンガポールの働く母親を支える人とサービス

日本で女性活躍というと、いかに定時で帰れる様に残業を減らすか、という議論が中心だと思いますが、シンガポールの女性は残業もするし、出張にも行きます。
日本の生産性の低さと残業の多さは改善すべき問題だと思いますので、残業削減が不要だと言うつもりは全くありません。

ただ、責任のある仕事をしていれば、たまの残業や出張は避けられないものだと思います。全く残業や出張がないポジションにしか女性は着かせないとなると、マミートラックと呼ばれる昇進に限界のある母親向けのキャリアトラックしか子供のいる女性は進めなくなってしまい、真の女性活躍には繋がりません。
シンガポールでは、これから紹介する母親以外の家族の協力や外部サービスの利用により、ある程度残業や出張をしても家族の心配をしなくて済むようになっています。

住み込みメイド

シンガポールでは、特にお金持ちの家庭でなくても住み込みのメイドがいるのが普通です。費用は税金なども合わせて月8万円前後で、一部屋(家族によってはBombShelterという倉庫の様な部屋に住ませる家族も多いが)を与えて家族と一緒に暮らし、料理・洗濯・掃除だけでなく送り迎えなど子供の面倒も見ています。

メイドの多くはフィリピンやその他周辺の途上国からの出稼ぎの女性たちです。これは周辺に出稼ぎ労働者を送り出す発展途上国が多いことに加え、人口の少ないシンガポールで女性を労働力としてフル活用するために、政府がメイドを受け入れる制度を整えていること等もあるようです。

メイドに関しては、上述のBombShelterなど暗くて冷房もない部屋に住まわせていたり、本来は権利である週1回の休みを与えていない家庭があるほか、先進国と途上国の格差を助長しているのではないか(途上国の女性に仕事を与える機会だと言う人もいますが)などの意見もあり、私は100%賛成ではありませんが、後述する通り「必ずしも家庭内で家事を回さなくて良い」というマインドは日本にも参考になると思います。

両親(祖父母)

シンガポールは端から端まで1時間でいける小さな国なので、シンガポール人である限り実家が遠くて手伝ってくもらえないということがありえません。
また文化的にも、結婚してからも毎週末両親の家を訪ねるなど親子や親戚関係のつながりが日本より強いので、親と一緒に住んでいる人や、日常的に子供を預かってもらうなど協力を得ている人が多くいます。

日本では、妻が家事・育児にかける時間に対して、夫がかける時間は10%前後という統計があります。欧米では30−40%くらいの国が多いので、このような男性の家事参画の少なさが女性活躍を妨げる大きな要因の一つとされています。
シンガポールには同様の統計が無いので数字は分かりませんが、私の経験から言うと日本の男性よりは家事・育児を担う比率が高い様に思います。
実際、会社の同僚でも「子供が体調を崩したから…」と言って会社を休む男性社員を見かけたりしましたし、私の義理の父も洗濯や掃除などをしています。

私の個人的な意見ですが、日本の今の20−30代は母親がフルタイムで働いていた人が非常に少ないため、家事育児をする父親のロールモデルが身近にいないことが、若者世代でも家事参画をしない男性が多いことの一つの要因だと思っています。
シンガポールや多くの東南アジアの国では、日本や欧米の様に専業主婦が一般的という時代を通過せず、最初から共働きを前提として経済成長を遂げており、若い世代も自分の両親がフルタイム共働きで家事育児を一緒にやっていた人が多いため、自然に自分もやろうとするのだと思います。

とは言え特に育児に関しては女性の方が負担が多い傾向はシンガポールにもあり、男性と女性で完全に平等にバランスが取れている家庭は多くない様に感じますが…

お持ち帰り・デリバリー

シンガポールはホーカーという屋台が発達していることもあり、家で料理をするという文化が元々希薄です。
私の義理の両親も料理はほぼ週末しかせず、平日はデリバリーを頼んでいますし、もっと若い家庭だと全くしないとか、そもそも料理ができないという人も多いです。
特に最近は、food pandaやdeliverooなどのデリバリーサービスが発達しているので、買いに行く手間すら省くことができるようになったと同時に、ホーカー以外のレストランの料理も家で食べられる様になりました。

罪悪感との向き合い方

ここまで、シンガポールではいかに母親以外が家事・育児をしているかを紹介しました。
メイドが高い、両親が近くに住んでいない、など日本では条件が色々異なりますが、そのような条件の違い以上に「自分がやらないと罪悪感がある」という女性がとても多いことが、日本の女性の家事負担の多さにつながっているように思います。
そこで、シンガポールの女性達を参考に、罪悪感から抜け出す方法を考えてみました。

事例を知る

この記事の目的がまさにそうですが、「母親以外が家事・育児をしている」事例をたくさん知ることが、罪悪感から抜け出す一つの方法だと思います。
やはり自分の身の回りの母親が全員1人で完璧に家事・育児をこなしていたら、自分だけやっていないと「ダメな母親」になってしまうような気がしますよね。

しかし、この記事のように国外に目を向けて見ると、母親以外が家事をやっている例はたくさん有ります。
シンガポールでは「メイドを雇っている母親はダメな母親」と言うような価値観はかなり少数派です。当たり前と言えば当たり前ですが、メイドを雇っている方が多数派のため、そんなことを言っていたらみんなダメ母になってしまいます…

日本でも、アウトソースなどを積極的に活用している家庭も増えてきているので、今身の回りにはいなくても、探せばそう言う知り合いは見つかると思います。
色々な事例を知って、「やってないのは自分だけじゃない」と知ることで、罪悪感が軽減できるのではないでしょうか。

「良い母親」を再定義する

日本では、家事や育児を完璧にこなし、おいしくて健康的な料理を手作りできる母親が「良い母親」という考え方が一般的な様に思います。
一方シンガポールでは、子供とよく会話をし、成長に向き合い、楽しい時間を一緒に作るのが「良い母親」と言う考え方が主流の様に感じます。シンガポール人との家族に関する会話では、Quality Time(質の高い時間)というワードがよく聞かれるのですが、子供の学校が休みに親も長期で休みを取り旅行に行くなど、一緒に楽しい時間を過ごすことを重視しているように思います。
また、その役割には母親・父親の区別はありません。

家事や育児を自分ですること自体が悪いことだとは思いませんが、自分で全てこなそうとするあまり忙しくて子供に当たってしまったり、話をきちんと聞いてあげられないのと、家事・育児を人に任せて子供と向き合う時間が作れるのとでは、どちらが「良い母親」なのでしょうか?多くの人は後者を選ぶと思いますし、発達心理学などの観点でも後者の方が子供にとって重要です。

日本の固定概念にとらわれず、「良い母親」像を考え直してみることも、罪悪感から抜け出すために大切だと思います。

根拠のない罪悪感と根拠のある罪悪感

上記二つの点をまとめたような形になりますが、「○○しないのはダメな母親」と言う様なことを他人に言われたり自分で思った時に、その話に根拠はあるのか?を考えてみることも必要だと思います。
例えば、掃除をする、皿を洗う、などのタスクを自分でこなすかどうかによって、家族の関係性や子供の発育に影響があるかと言う理屈に、科学的な根拠があるとは思い難いですよね。
一方で例えば食事については、栄養バランスや添加物などを全く気にせず外食ばかりするのは、科学的に見ても明らかによくないです。
根拠をもとに選択をしていれば、何でもいいから手作りする等ではなく、時短でもバランスの良いレシピを探す、栄養バランスの良い宅配サービスを頼むなど柔軟に対策が取れますし、ゴールが明確なのでモチベーションも保ちやすいです。
(ただし栄養関連に関しては迷信やデマも多いので注意したいところです。よく調べましょう。)

このように、「自分だけじゃない」と分かる事例を知り、「良い母親」の定義を考え直した上で、根拠のない罪悪感とはサヨナラすることで、より外部サービスや自分以外の家族に家事を任せられる様になるのではないかと思います。

その他制度や文化の違い

最後に、ここまでで書けなかったシンガポールと日本の子育てに関する違いについて見ていきます。

産休・育休合わせて4ヶ月

シンガポールでは、産休・育休合わせてシンガポール人は4ヶ月、外国人は3ヶ月です。私も4ヶ月で復帰する同僚のシンガポール女性を見てきましたが、4ヶ月だと会社側も増員なしで何とか繋げますし、本人もそのまま同じポジションに戻れるので、育休によるキャリアへのダメージがほとんどありません。
(むしろ兵役のある男性の方がキャリアへのダメージが大きいと言われたりもします)

メイドや親のサポートが受けにくい日本で4ヶ月は難しいと思いますが、例えば夫にも長期で育休を取って貰いその間に復帰するなど、工夫できることはあると思います。

また、一時期政府の施策でも3歳まで育休を取れるようにするという案が出ていたりと、女性にとって長く育休が取れる方がいいと勘違いしている人が日本には多いですが、あまりに長期の育休は上述のマミートラックに陥りやすくなります。
長く産休を取れる環境を作るのではなく、できるだけ早く復帰できるようにサポートする方が、確実に本当の女性活躍につながります。

シンガポールの母親の1番の負担は子供の学業のサポート

おそらく唯一、シンガポールの母親が日本の母親より負担が大きいと言える部分、それは子供の学業のサポートです。
シンガポールは日本以上の学歴社会・競争社会で、受験戦争が非常に過酷です。学校や塾から宿題を大量に出されることに加え、採点などを親がすることが求められることが多々あるそうです(この点に関しては教育省も問題意識を持っていて、改善に動いている様ですが)。

日本では女性がキャリアをドロップアウトするタイミングといえば出産か子供が小さい時期ですが、シンガポールでは子供の受験期に受験のサポートのために仕事を辞める女性が多く、それを防ぐために子供が受験期の親向けの長期休暇を設けている会社もあるくらいです。

この点に関しては過度な受験競争の緩和とともに、改善されることを願うばかりです。


結論:働く女性を苦しめる価値観を見直そう

この記事で私が一番言いたいことは、日本の働く女性を苦しめているのは政府でも会社でもなく、人々の価値観であるということです。
もちろんシンガポールはメイドの安さ、親のサポートの得られ易さなどは日本より恵まれている部分もありますが、それ以上に、やろうと思えば日本でもできるのに、価値観によって選択を狭められている人があまりに多いと思います。

この記事が、あなたが自分や周りの人を苦しめている価値観に気づき、見直し、日本で新しい価値観を広めていくきっかけになれると嬉しいです。